ずっと真夜中でいいのに。「ぐされ」をレビュー

このアルバムをレビュー出来るのが楽しみで楽しみで仕方なかったです・・・!(なのに、書き上げるまでに時間かかりすぎました・・・。)2月10日にリリースとなったずっと真夜中でいいのに。の『ぐされ』、今回はこちらをレビューしていきます!

私は、2019/20 COUNTDOWN JAPAN(以下、CDJ)にて初めてライブを観てからというものずっと虜にされております。今回も最終日の大トリを予定しておりましたが、残念ながら2020/21のCDJは新型コロナウイルス感染症拡大に伴い開催中止となってしまいました。しかし、最近ではメディア進出や映画のタイアップになるなど、更なる人気に火がついています。そんなずっと真夜中でいいのに。が2月10日にリリースしたフルアルバム『ぐされ』を今回は紹介していきます!

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ずっと真夜中でいいのに。

メンバーはボーカルのACAねさんのみのバンドです。顔は一切公開しておらず、歌の他にギターや「エレクトリックファン」という扇風機を使ってシンセサイザーのような音を出す楽器(?)を担当しています。彼女の繊細でありながら迫力ある歌声は多くの人の心を魅了し、処女作となる「秒針を噛む」は8400万再生以上となっています。(2021年2月現在)

さらに特徴的なのはMVは全てアニメーションとなっており、これまでに様々なアニメーターとコラボを果たしています。

正しい偽りからの起床』で初の円盤化し、『今は今で誓いは笑みで』、初のフルアルバムとなる『潜潜話』をリリースしました。2019/20 CDJにて初の真夜中のライブを行いました。その後もミニアルバム『朗らかな皮膚とて不服』をリリースし、今回2枚目のフルアルバムとなる『ぐされ』をリリースしました。

今作では、映画「さんかく窓の外側は夜」の『暗く黒く』、『過眠』や映画「約束のネバーランド」の『正しくなれない』といったタイアップ作品も収録されています。今作に関してACAねさん曰く、「一言で言うなら“腐っても鯛”を目指したアルバムです」とのことです。

『ぐされ』収録曲

胸の煙

ピアノからの4つ打ちのビートがなんとも心地よさを感じるイントロの新曲から幕を開けます。ずっと真夜中でいいのに。(以下、ずとまよ)にしては曲の構成が基本的な印象を持ちました。歌詞の世界観とは裏腹に、ドラムのビートがどことなくダンスミュージックかのようなノリの良さと、そこに本質をチラつかせるようなピアノが肝な気がします。

構成がAメロ→Bメロ→サビのような単純さからか身構えずにも聴ける曲でした。しかし、前述したような演奏面の特徴を見つけるのも、ずとまよの曲の楽しみ方のひとつですね!

正しくなれない

映画「約束のネバーランド」のタイアップ曲になります。THE FIRST TAKEでも公開されたこちらの曲は、 ACAねさんのハイトーン半端なさすぎる一曲です。これ、女性でも高いと思うよね?ってくらい高いです。ACAねさんの歌唱力には本当に脱帽です。普段のウィスパーボイスな印象に加え、華奢な体のどこからそんな声量が出てくるのか・・・。高いところもブレない安定感が聴いていて鳥肌もんでした!

ずっと真夜中でいいのに。の全ての曲に共通ですが、ACAねさんの歌詞に使う言葉選びが私はとても好きです。歌の真意はYouTubeのコメント欄にいる考察班にお任せするとして、歌詞が歌の説明になりすぎないことって大事だと思うんです。もちろん、ストレートな思いを歌詞にすることももちろん素敵だし、感動が伝わりやすいので好きなんですが、あえて詞的な言葉選びをする事で歌に対していろんな想像ができると思うんです。真意を読み解こうと、より深く曲を聴き入るのってすごくわくわくしてきませんか?ずとまよの音楽には、そんな楽しみ方があると思ってしまうのです。

お勉強しといてよ

はい、ベースが平常運転してますね。とっても変態的です(褒め言葉)。『秒針を噛む』か、この曲を聴いて“ベース弾いてみてぇ・・・!”と思った人が増えたのじゃないでしょうか。2番サビ前のリフを初めて聴いた時、誇張とか無しに声が出ました。そのくらいベースの良さが前面に出てますね。ラスサビのウォーキングになる感じも最高です!

個人的には、Bメロがもう天才的だと思うんです。どことなくリズムを崩すというかファンキーなノリが自分にはドストライクでした。“焼き焼き”や“ヤンキーヤンキー”のリズムなど耳に残るような印象と覚えやすさを感じました。

でも実はこの曲は、ギターのイントロとサビのリフはとっても良い仕事してると思うんです・・・。耳馴染みがとても良いところも、Aメロ、Bメロからの疾走感を出す感じもこの曲の雰囲気を作る大きな要素だと思いました。

勘ぐれい

ミステリー作品『project:;COLD』の主題歌となっております。どことなくギターがラテン調な印象があって、今までの曲とはまた違う世界観があります。Aメロに関してはドラムとベースの低音具合がぼんぼんしてて心地良いですね。またしてもベースソロがかっこいいんだよなぁー!そこからCメロの緊迫感もすごく好きです!

もう最後はぼんぼんぼらんぼんぼんです。ん?わかりませんか?ぼんぼんぼらんぼんぼんです。ぼんぼん言ってて可愛いです。

はゔぁ

はゔぁ』とは・・・。ここはまよらーの考察班の皆さんにお任せするとしましょう・・・。入りのベースの音が何処となく不安定な音で「お?」と思いましたが、そんな不安はすぐに捨てましょう。疾走感のある曲がすぐにやってきます。

エレクトリックな音色が曲の雰囲気を創造してますね。最近のずとまよにはこういった系統の曲が増えてきた印象があります。創作するってこういうことだよなー!音楽ってメロディだけじゃなくて、使う楽器や音色だけで印象が全然変わってきますからね。新しいものを追求するずとまよらしさを感じる一曲でした。

機械油

こーんにちはーで始まるこの曲大好きです。Aメロ、Bメロのラップがどツボです。ずとまよの曲では韻を踏んでる歌詞がこれまでにも見られましたが、ここまでガッツリ韻踏んでるのも珍しいですね。使う言葉もずとまよの世界観を壊さない言葉選びで、これまた新たな世界観を感じさせてくれますね。

こちらもオープンリールが良い仕事しています。オープンリールってこんな使い方があると知らされました(笑)シンセ感があって面白い楽器ですよね。もしかしたら知らないだけで、こういう創作楽器で作られている音楽はたくさんあるのかもしれないですね。

この曲はなんといっても津軽三味線が印象的です。近未来な楽器と伝統楽器の融合・・・素晴らしい!常人には至らない発想に度肝を抜かれます。津軽三味線って他の楽器と音域が被りにくくて、こんなにかっこいいんだなと新たな発見をしたのでした。

暗く黒く

映画「さんかく窓の外側は夜」の主題歌となっているこちらの曲は、MVがとっても切ないのです・・・。ずとまよのMVってどれもちゃんとストーリー性があって好きなんですが、ナナシちゃんが、付き纏う孤独と戦って生きてく様がなんとも胸にグッと来ます!

ストリングスが前面に出てきてる印象があり、ずとまよの中ではこれまた珍しいのかな?曲の構成としては、1番ではAメロ→Bメロ→サビと来たところが、2番ではまた違うメロが来てのサビという型にはまらないような構成になってます。使う楽器などには新しい試みを感じながらも、ずとまよらしさは決して希薄しないところが魅力的です。

MILABO

軽快なピアノのイントロが可愛らしいです。タイトルの『MILABO』から分かるように、ミラーボールが似合うダンスナンバーになっています。

サビのギターのカッティングとかすごい好きですねぇ!カッティングフレーズによってサビにリズムのメリハリが出て、より一層ノリが良い感じになりますね。間奏の管楽器のソロも音色に軽快さを与えてくれていてマッチしている印象を受けました。こういった可愛らしい曲が作れるのも、ずとまよの魅力の1つですね!

ろんりねす

ピアノが気持ち良い一曲です。また、ドラムにおいてはおそらくスティックはブラシを使ってる効果もあってか、曲の切なさが際立っています。

聴き始めから何処となくジャジーな印象を受けていましたが、予想はアウトロで的中でした。最後は倍テンのジャジーなアウトロ・・・素敵やん?ピアノのソロもそうだし、ベースのウォーキングフレーズもドラムの鈴鳴りのような音色が曲を何倍にもオシャレにしてます。こういうかっこよさとか美しさにはジャズには敵わないなぁと実感した一曲でした。

繰り返す収穫

率直に感じた印象としては、あれ?初めて聴いたのに懐かしさを感じる…?でした。というのも、今までは近年の音楽に共通する(特にボカロ系)ような早い歌メロだったり、息づきが難しいようなところをずとまよにも感じていたのですが、この曲は何処となくJ POP的な歌メロと、歌と歌との“間”(歌メロ同士に空く間といえば伝わりますかね?)を感じました。が、それがまたいいんです!

ヨルシカのレビューをした時にも記述しましたが、歌の“間”って曲や歌詞の情景などを想像させる時間を与えてくれるような気がするのです。いろんな想像をして、自分なりに音楽の真意を考えたりできたら、音楽の楽しみ方が増えて楽しいですよね。ずとまよの楽曲は演奏を聴くのも、歌詞の真意を想像するのも楽しいので、音楽というものを余す事なく楽しむことができます!

過眠

映画「さんかく窓の外側は夜」のオープニングテーマになっています。優美なストリングスとピアノがまたどの曲とも違う表情をしています。

しかし、メロディが高いですね・・・。気軽にカラオケで歌える歌ではないですね(笑)ACAねさんが歌うからこそ良さが最大限に引き出させれる曲です。使われてる楽器も少ないので、ACAねさんの歌唱力が際立つ素晴らしい曲ですね。

低血ボルト

ピアノが2台使われているというなんとも贅沢な楽曲です。テンポも早く、流れるようなピアノフレーズや繊細なギターリフ、いつもの如く暴れるベースが申し分無くかっこいいです。

ACAねさんの歌い方もどことなくクールに感じますね。歌い分けまでできる器用さを併せ持つ彼女には、限界というものを感じませんね・・・。

奥底に眠るルーツ

こちらも『繰り返す収穫』のようなポップさを感じるアレンジメントです。どことなくカントリー調なビートを感じます。

ずとまよの楽曲は複雑な構成になってると印象を持ちがちですが、王道構成でも良い曲を作れるずとまよの素晴らしさですよ。しかも、このアルバムの13曲目にぴったりですし。このアルバムが終わる寂しさと、ずとまよのこれからが始まるわくわく感を感じさせるような印象を持ちました。レビューしてても、改めてすごいアルバムだなぁ・・・。

暗く黒く(Twin Piano Live ver.)

ピアノ2台のみとボーカルという編成のライブで披露された『暗く黒く』です。

楽器の編成が変わればもちろん曲の印象が変わるんですが、曲の芯の部分は良い意味でそのままに表現されてるという演奏陣のレベルの高さが伝わってきます。ぜひ原曲との違いもじっくり感じて聴いていただきたいですね。

感想

めちゃくちゃ待ち焦がれたアルバムだったので、大大大大満足のアルバムでした!楽曲の表現力も枯渇する事なく新たなものを惜しみなく使うずとまよには、良い意味で意外性という期待を感じてしまいます。

ただ私としては、15曲入りにしてほしかったです。なぜなら『Ham(『朗らかな皮膚とて不服』収録)』が収録されてない・・・!個人的にはかなり好きな曲の一つなんだけどなぁ・・・。だけど、『朗らかな皮膚とて不服』を手に取ってもらって、さらにずとまよの魅力にハマってくれる人が出て来てくれるなら、それはそれでいいのでしょう!

最近ではメディアにも取り上げられ始め、勢いに火が付いているずっと真夜中でいいのに。の人気は右肩上がりなことでしょう。またライブで直接観たいけど、どんどんチケット取りづらくなるんだろうなぁ・・・。何よりも、この先に生まれてくる楽曲たちにはどんな表現で創作していくのか、今後も注目です!